見て10倍楽しむための、ここだけの話 2000年3月3日

すでに雑誌広告やチラシなどで写真集の告知がはじまっているので、本の中で紹介されている何点かの写真を目にした方も多いと思います。
発売が少し早まりました。3月15日には全国の大型書店に並びます。

今回は、個々の作品に関するちょっとした裏話を書きました。このページは、これからも更新していくつもりなので、時々覗いてみてください。(最終更新日3月3日)

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裏表紙
フレンチ・リバー村の写真。
これと全く同じアングルで捕らえた村の「春」の表情が、P.14-15ページに見開きで紹介されています。
双方には、3年の月日の開きがあります。よく見比べると、青い納屋が大きくなっていたり、丘の上に新しい家が建っていたりと、村が変化している様子に気づきます。
なぜ島が、いつまでも素朴な景観を残し続けることが出来るのか……?
それは、住む人々が、何か新しい物を一つ造る時、昔ながらの建築スタイルを貫き通しているからなのです。
青い入江には、渡り鳥ブルーへロンがいますが、皆さんお気づきになりましたか?

P.2〜3
たぶん、この見開きの写真には驚かれたことでしょう。
最後の解説でもふれていますが、右奥に見えるのが島と本土を結ぶ橋。その奥に広がる陸地が、隣州のニュー・ブランズウィック州です。

P.22
ぼくが特に好きな写真です。
もう二度と撮れない、貴重な写真です。
20世紀に、この一枚が残せただけでも、誇りに思います。

P.26〜27
草花の組写真。
左上から右下へと、花が咲く順番に写真が並んでいます。(4月下旬から8月中旬)
レディースリッパー(アツモリソウ)が、プリンス・エドワード島の州花です。

P.31
ルピナスが咲きみだれる広大な花畑は、この場所が一番有名です。
でもここは、少しだけツアーコースから外れているので、島巡りの観光ツアーでは立ち寄りません。もし少人数のツアーだったとしたら、村に入る前ドライバーに、「花畑に行きたい!」と言ってみてください。きっと車を回してくれるはずです。

P.33
たとえ印刷でも、水の質感が出たので、本当に嬉しく思いました。
森の中でこの泉を見つけた時、思わず「あっ」と叫びました。
キャプションでも書きましたが、この日、森の中には風が吹いていたのです。そのため、なかなか水面が鏡のようにならず、撮影時はとても苦労したことを覚えています。
実はこの一枚を生み出すために、フィルムを2本も使いました。

P.38〜39
キャノーラの花畑。(キャノーラ・オイルのキャノーラです)
「えっ、島にこんな花畑があったのか!」とびっくりされたことでしょう。キャノーラ畑が増えてきたのは、ここ2〜3年のことです。
この写真を友達に見せると決まって、「花畑の中に入って撮影したのか?」と質問されますが、いや、そんなことはありません。望遠レンズを使い、花畑の脇から写真を撮っています。
花畑の奥に黒いボックスがずらりと並んでいますが、これがミツ箱です。写真ではわかりませんが、箱のまわりにはおびたたしい数のミツバチが飛び交っています。

P.41
入江の脇にカヌーが置かれています。教会同様、このカヌーにも拘って撮影しました。木々の緑に抱かれるようなアングルを、ようやく見つけ出したのです。

P.44
「5日間毎日足を運んだ」という表現があります。でも、シャーロットタウンからではありません。実はこの年の夏、この村から2キロほど南下したところにあるキャンプ場に、テントを張って暮らしていました。ですから、キャンプ場から毎日この場所まで「通勤」したというわけです。

P.45
2年前にこのホームページで紹介した取材記で、「花畑に関する何かの写真をどうしても撮りたい!」と書いた覚えがありますが、その「何かの写真」とはこの写真のことです。
デイジーの花畑が夕陽に照らされる情景を、3カ月間かけて狙いました。
最近、「一点のベストショット」を生み出すためだったら、そのために取材費を100万円使おうが200万円使おうが、ちっとも惜しいと感じることはなくなりました。
だぶん、「土地」と「写真」に心から惹かれているからなのでしょう。

P.47
作品集の中で最も新しい作品は、このクローバー畑の写真です。1999年の夏、帰国する直前に撮影に成功しました。
帰国後、この写真集のレイアウト入稿にギリギリ間に合ったというわけです。

P.59
「本当にこんな色になるのか?」 とよく質問されますが、本当です。カナダに住む人なら誰でも知っています。
ぼくは撮影時、色フィルターは一切使っていません。

P.65
撮影時、ネコが庭を横断しているのは知っていました。
でもぼくは犬派のため、猫を好んで撮影するようなことはしません。しかし何故か、この時だけはどうしてもネコの写真が撮りたかった。そのため、わざわざネコに声を掛けたのです。
もちろん、パチリと写真を撮ればいいのですが、ぼくの使っているカメラは大型のため、撮影時は常にスローシャッターとなります。(昔の写真のように、被写体には数秒間静止してもらう必要がある)
ネコに向かって「頼むから動くなよ……」と念じたのはそのためです。

P.83
「住む人々の移動の手段は車に代わった」という表現があります。
実はこの写真の中に、ちゃんと車(GMのグランドAM)が大きく写っています。(ヒント・左端)
一見しただけでは、わからないような入れ方をしました。

P.85
クリスマスツリーを持っているおじさんが、ぼくの親友アーサーです。
2人の女の子は彼の弟の娘さんたちです。キャプションに「親子」と書かず、「おじさんと子供たち」という表現にしたのはそのためです。

P.87
海に沈む夕陽ではなく、陸に沈む夕陽を撮りたいな、とずっと思い続けていました。それが可能のなるのは、まさに海の上を歩くことが出来る「冬」なのです。
海面はシャーベット状に見えますが、実はここもガチガチに凍っています。人が乗ってもびくともしませんでした。(外気温はマイナス25度くらい)

P.86〜88
島には春夏秋冬と明確な季節があります。この作品集で季節感をいかに伝えるかで、今回のスタッフは頭を悩ませました。
最後は実にドラマチックに終わっています。多くの人に、この終わり方がニクイね、と言われます。
特に冬の写真は、「暗〜い冬の世界に潜む、繊細で眩しい光」を大切にしました。

P.89〜99
1色ページには「ぼく」とい固有名詞を使わず、すべての文章を説明調で書きました。
日本では、まだ多くの人がプリンス・エドワード島という島を知らないので、ここで島の風土や歴史を大まかに紹介したというわけです。
個々の作品解説の所でも、撮影時のエピソードとともに、漁業や農業の話、民家や教会などの建物のことをさり気なくふれています。島を深く知る上で、是非参考にしてください。

P.99
ポートレートの写真。
自分の顔写真を発表するのは実に恥ずかしいことです。でも作品集だから、まあ仕方がないかな。
最近、個展で多くの人にこう言われるのです。
「あれっ、吉村さんって随分とお若い方なんですね。よく雑誌とかでお名前をお見かけするけど、もっと、年輩の方と思っていました!」
だから、その誤解をとくためにも、今回の写真集にはあえて顔写真入り。

実はこの写真、プリンス・エドワード島西部にある、レノックス・アイランドで撮影されています。
ここは島の原住民、ミクマック・インディアンの居住区、島では最も歴史的意味合いの深い地であり、ぼくのようなアジア人が「スピリチュアルな何か」を感じる場所なのです。
写真は、「秋の清々しい大気の中、さりげなくカメラを持って、土地の精霊を感じながら被写体を求め歩いている……」という、文藝春秋が好みそうな純文学風のポートレートになっています。
でも、たぶん友達は言うだろうなあ〜。「吉村、おまえ、どうせこの写真はヤラセだろ」って。