制作にあたっての、ちょっとした裏話(2000年2月25日)
初の本格的作品集になることから、今回はベストショットを発表することにしました。
写真はいつでもどこでも簡単に撮れるのものですが、ベストショットとなると話は別。一カ月のカナダ滞在で1枚撮れれば上出来、といった感じです。
写真集として「一冊の本」にまとめる場合、ベストショットばかりを並べると、見る方が疲れてしまいます。そのため、イメージ的な写真も数点ちりばめています。
また今回は、4箇所に組写真のページを設けました。「野に咲く草花」「島の人々」「野生の小動物」「クリスマス」です。島の美しい景観に抱かれるように存在する、身近な自然や人々の暮らしを垣間見ることが出来るでしょう。
最後には、12ページの白黒ページがありますが、一色だからといって手を抜かず、気合いを入れたページ構成になっています。
ここでも、すべての写真をもう一度小さく紹介し、その下に作品解説&撮影データを書きました。ぼくがどんなカメラとフィルムを使い、どんな光線状態の元で撮影しているかが、一目でわかるようになっています。写真愛好家の方は是非参考にしてください。
印刷は、凸版印刷で行いました。
写真の美しさにおいては、「オリジナル・ポジ(原画)」が最高峰です。だから印刷媒体にする場合、それにいかに近づけるか、もしくはそれをいかに超えるか、が重要なカギとなってくるわけです。
ポジフィルムの魅力を忠実に再現する高細密印刷で行いました。通常のオフセット印刷は175線ですが、それを230線にして色分解してもらったのです。
もちろん最初から最後まで、各担当者の徹底的な厳しい品質管理の元、作業を進めています。(実は今も、編集者、印刷会社の人、そしてぼくが、輪転機の前で詰め、刷りあがりをチェックしています)
また、テカテカした紙だとあまりに味気ないので、マット系の紙を使い、島の素朴さと本としての高級感を出しました。
本の定価は3,600円ですが、これは写真集としては破格値だと思います。
今回、制作現場を約一年間に亘って見続けてきましたが、「一冊の本を形にするのは、とても大変なんだなあ〜」とあらためて悟りました。キャプション一字訂正するだけでも、多くの時間と労力を消費します。日々、編集や印刷会社の方々はすごい仕事量です。
ぼくは今まで、ハードカバーの小説が一冊1,500円〜2,000円するのを見て、「本ってどうしてこんなに高いわけ?」と愚痴ばかりこぼしていましたが、その意味がようやく理解出来ました。
いずれにしても、本の質は高い安いで決まるのではなく、大切なのは中身です。今回の写真集は、皆様を失望させないよう、精一杯努力したつもりです。
アメリカ、カナダでは、写真集のような本は「コーヒーテーブルブック」と呼ばれています。誰一人として「フォトブック」「ピクチャーブック」と言う人はいません。
つまり、「テーブルの上に置く本」ということ。
外国人のお宅に訪問した方ならわかると思いますが、リビングルームには必ずソファーがあり、中央にはテーブルがあり、そしてその上には写真集や画集が置かれています。
来客が「どっこいしょ」とソファーに座った際、さり気なくテーブルの上の本を手に取り、パラパラとページをめくり、束の間の「癒し(いやし)」を楽しむわけです。そう、アートが人々の暮らしにごく自然にとけ込んでいるのです。
日本では、写真集はごく限られた人だけの、とても小さなマーケットですが、外国と生活環境が違うので、仕方のないことなのでしょう。
また、「男友達の部屋の卓袱台の上には、必ず○○○○○写真集が置かれているぞ!」 と反論する方がいるかもしれませんが、それとこれとは違います。
だからぼくは、今回の作品集は、日本版の「コーヒーテーブルブック」になればいいな、と希望しています。
全ページ、著名なデザイナーの方にデザインしていただきました。特に表紙のデザインはとても洒落ています。
「PRINCE EDWARD ISLAND」というタイトル文字は金色、一面の写真はモンタギュー村のリンゴの果樹園、裏表紙は島の中で代表的な風景、フレンチ・リバー村のパノラマ写真です。
とても「洋書っぽい」作りになっています。
次回の更新では、いよいよ写真集の中で発表している個々の写真の裏話に迫ります。