個展を前に・その1
地方から来て下さる方へ(1999年4月4日)
「行きます!」というメールをたくさんいただきます。僕の個展にわざわざ足を運んで下さるすべての方々に感謝いたします。特に地方からの方々には全く頭の下がる思いです。そこで、そんな方々へのメッセージ。
くれぐれも僕の個展をメインとせず、必ず東京で何か別の用事を作ってください。都心のデパートでやっているイベントに行くとか、お台場やディズニーランドで遊ぶとか、日頃疎遠になっている兄弟や親戚を訪ねるとか……。僕の個展だけを目当てに上京するというのは少々危険です。個展を見て「何だ、こんなものか。たいしたことねーや」と感じた場合、かなり後味が悪い結果となるからです。
もしAさんが福岡から来たとしましょう。福岡ー東京の往復は27.400円(スカイマークエアラインズ使用)、羽田-新宿間の交通費が1.340円(モノレールとJR使用)、昼食代870円(コンビニの弁当とウーロン茶)。合計で約3万円も出費することになり、つまり「3万円も無駄金を使ってしまった!」という罪悪感に苛まれるからです。札幌からだったら36.000円。新幹線を使って大阪からだったら23.000円、盛岡からだったら21.000円。
つまりそれは、1800円払って超つまらない映画を見てしまった時より何十倍も深刻です。
もちろん僕は、写真家として生きている以上、写真で飯を食っている以上、自分自身が生み出す作品には自信があります。今回の個展では、「これが写真というものだ!」という強い態度で望んでいます。だって、最近巷に出ている写真集はあまりにヒドイ代物ばかりですよね。今もてはやされている若手カメラマンの写真集の稚拙さは仕方がないにしても、売れっ子写真家の作品集だって、本屋で立ち見する度に、「どうしてこんなのが本になるわけ?これが紙の無駄というんだよな〜」と、作り手の態度に呆れかえっています。まあ、ちょこっと行って簡単に取材しただけの内容が本になってしまうというのは、薄っぺら文化が好まれる日本では仕方のないことなのかもしれませんが、それにしても情けない。
ちなみに今回の個展で発表する作品群は写真集にはなりません。マーケット優先の日本の出版界の中では、僕が生み出す「こだわりのアート」はなかなか理解されにくいのが、悲しいけど、現実です。
だからこそ、今回の個展では、そんな軽いノリの写真家との旗幟を鮮明にさせる!といった強い意志もあるのです。(オイオイ吉村、そんなにでかいこと言って大丈夫かよ…と、友達が心配する声が聞こえてきそうですが、僕は信州人だから仕方がない)
まあ、こんな強がりばかりの自分ですが、やはり1パーセントの不安というものがあり、つまりその微かな不安の中から、「地方からわざわざ来てくれる人には申し訳ないよなあ〜」という気持ちが芽生えるわけです。
いずれにしても、個展を前にやることが山ほどあり、また次々と厄介な問題が発生し、無事開催に漕ぎ着けるかどうかが目下一番の不安です。
そして最後に一つ。今回はあくまで「個展」というスタイルですので、会場は実にこじんまりとしています。発表する写真の点数は合計で55点。でも、「プリンス・エドワード島」を11年間追いつづけた集大成の個展です。