プリントン使用レポート
その1・その2・その3・その4・その5・その6
その1
プリントンを初めて使用する(1999年5月4日)
エプソン(株)さんから、「プリントンを使ってみませんか」と言われた時、咄嗟に「はあ」としか答えることが出来ませんでした。今日までの写真人生で、デジタル写真に魅力を感じたことなど一度もなく、デジタル全盛期となったいまでも「自分とは別世界だな」と無視を決め込んでいたからです。
でも別に断る理由も見つからず、僕はついつい「はい、是非使ってみます。送ってください、お願いします」と返事をしてしまいました。
数日後、我が家にプリントンが届きました。
玄関で大きな段ボール箱を受け取った時、ああまた我が家に余分な「もの」が増えてしまったなと感じました。でも開封してみると、プリントン自体は意外とコンパクト、棚の上の小スペースにすっぽりと収まり、シックなボディーカラーは部屋のインテリアにも似合います。
さて、実際プリントンを使用するには、まず写真を撮らなければなりません。僕は早速、プリントンと一緒に送られてきたデジカメを使ってみることにしました。
ある日、個展会場にデジカメを持ち込みました。デジカメと言っても、大抵の操作はいままでのカメラと同じです。大きな違いと言えば、フィルムがコンパクトフラッシュと呼ばれるメモリーカードに変わったくらい。
僕はデジカメを使い、朝から積極的に会場内で写真を撮りましたが、シャッター音が異常に小さいので、途中「これで本当に写真が撮れているのだろうか…」と不安になったのも事実です。43メガのコンパクトフラッシュには、ファインモードで107枚もの写真データを蓄積することが可能です。よってフィルム代を気にすることなく、次から次へとシャッターを押せるのも魅力です。
その日の晩、撮った写真をプリントンを使ってプリントアウトしてみることにしました。
僕は電気製品の説明書を読むのが嫌いです。でもプリントンは説明書など必要ありませんでした。デジカメから取り出したコンパクトフラッシュを、アダプターを使って指定の位置に差し込みます。そして電源を入れると、「ピロピロピロリーン」という音楽とともに何やら女性の声が。彼女の声を頼りにボタンを操作していくと、あっという間にプリントがはじまり、あれれ、いとも簡単にプリント写真が出てきました。
う〜ん、これは実に新鮮な感動です。それも写真は銀塩プリントと何ら変わりのないクオリティーのよさ。僕はこの瞬間感じました。「これじゃあ、写真屋さんなんかいらないじゃん!」
まあ厳密に言えば、いかにもデジカメで撮ったという粒子の粗さが気になりました。でもこれはもっと高い画素数のカメラを使えば解決することでしょう。30万画素より80万画素、80画素より130万画素、130万画素より200画素……。いま巷では盛んに「画素数、画素数」と騒いでいる理由がようやくわかりました。
加え、写真家の僕から一言いわせてもらえば、やはりデジカメとて、レンズで決まると思いますよ。だから高い画素数を持ち、なおかついいレンズを持ったデジカメが一番の「買い」のような気がしています。
さて、プリントンの便利さと使い勝手のよさは十分理解出来ました。しかし、写真家の僕が、これをどのように仕事に利用すればいいのかという疑問が残ります。
僕の作品は、中型や大型カメラを使いポジフィルムから生み出されています。だからこそ、個展を開いたり写真集を作ったり出来るのです。よって撮影スタイルを変えない限り、プリントンやデジカメはこの僕には必要ないのです。たぶん記念写真くらいしか……
そうか、記念写真!
撮影で北米各地を回っていると、多くの人々との出会いがあり、記念にポートレートを撮ったりします。そして最後には決まって「写真を送りますね」と約束して別れるのですが、この「写真を送る」という作業は結構写真家にとって面倒なのです。僕はすべての撮影においてポジフィルムを使っているため、ダイレクトプリント用にわざわざスリーブから切り出し、それをラボ入れしています。当然かなりの手間と費用がかかります。
以前、ポラロイドカメラを使って、撮ったその場で写真をプレゼントしていた時期もありましたが、人と人との繋がりの中にはある「間」を大切にしている僕は、その即効性がどうしても好きになれませんでした。だからこそ、自宅で、それも低コストでプリント写真が作れるというプリントンは、きっと重宝することでしょう。