秋のカナダ取材記(今回はなぜか長文です)
今回から、吉村もいよいよアメリカ経由でカナダへ入ることにしました。これからはノースとコンチのマイレージをためるつもりです。乗り継ぎ時間がいいため、モントリオールやハリファックスへ入るには、アメリカ経由で入った方が楽です。アメリカとカナダ、つまり2回も厄介な入国審査がありますが、慣れればそれほど苦ではありません。

何とデトロイトまでの直行便は、747のジャンボが2機も飛ぶのです。やはりカナダと違い、アメリカに行く人はたくさんいるんですね。吉村は2:50発の86便の方に乗りましたが、当然満席。隣は体の大きなオジサンだったので、通路側の席にして正解でした。

定刻通りデトロイト空港に到着。カナダ行きの便に乗りかえる前に荷物検査がありましたが、やはりとても厳しかったです。スーツケースの中身は係員に徹底的に調べられます。手荷物検査では、バッグと一緒に、靴とベルトもX線の機械に流しました。どうしてこんなにも殺伐とした世の中になってしまったのか……何だか悲しいですね。

外人に喜ばれる日本のお菓子のNO.1は「コアラのマーチ」です。外人にとっては、コアラの表情がすべて違うという繊細さがたまらないとか。外国の航空会社の客室乗務員は、日本に来たら必ず成田でコアラ〜を買って帰るそうです。だから空港の売店には山積みになっています。今回、友人へのおみやげとして、コアラ〜を近くのスーパーで買って用意していました。でも、出発前の荷物準備の時に、ついつい自分で食べてしまいました。で、今回も友人へのお土産はなしです。

無事にモントリオール空港に着きました。空港でレンタカーをピックアップ、今回は約15万円で契約です。ガソリン代を含めれば約25万円。それにしても毎回毎回取材費の捻出は大変で、時々写真を続けるのが嫌になることもあります。お金はいくらあっても足りません。

すぐにローレンシャンに入りました。翌朝、ロケハンしてみましたが、残念ながら紅葉はまだはじまっていませんでした。友達の情報はあまりあてになりませんね。やはり信じられるものは自分の目とカンです。とりあえずここに2日間いて、今後の予定を再検討することにしました。

この地にもたくさんの日本人が暮らしています。夜は暇だったので、その中の一人、Tさんと食事をしました。彼は、日本のある有名ホテルで料理長として活躍していた人です。このケベックで、フランス&イタリア料理のシェフとして一旗揚げたいと頑張っていました。近頃、日本の若者がダメになったと言われていますが、僕に言わせれっば決してそんなことはありません。Tさんのように夢を追いかけ、必死に頑張っている若者は、まだまだたくさんいます。海外に出るとそれがよーくわかるのです。

ちっとも紅葉がはじまらないので、最初にアトランティック・カナダへ行くことに決め、朝一番で宿を後にしました。でも150キロほど南下したところでUターン、再びローレンシャンへ戻りました。最後の最後で、このままこの地で紅葉のはじまりを待っていた方がいい、という結論に達したのです。日々の生活の中で迷いがたくさんあります。その度に、どちらを選ぶべきかと苦しみます。今日も朝から「どうしよう、どうしよう」と悩んでいましたが、あやふやな気持ちで1500キロのドライブは危険だな、と判断し、ローレンシャンに残る道を選びました。宿に戻ってきたら、オーナーのおばさんに大笑いされてしまいましたけれど。

毎年、宝島社の「このミステリーがすごい」や週刊文春の「ミステリーナンバー10」で、特に面白いとされるミステリーが選ばれていますが、これって一体誰がどういう基準で選んでいるのか疑問に感じることがあります。なぜなら、ナンバーワンや上位に入った作品を読んでみても、たいてい面白くないからです。カナダに来てから、とても面白いとされ、ベストセラーになった『半落ち』を読んでみましたが、う〜ん、吉村は何も感じませんでした。ちなみに、ミステリーではないけど、しばらくベストセラーになっていた『世界の中心で愛をさけぶ』も読んでみましたが、こちらも、う〜ん、という感じでした。でも売れているということは、世間では「面白い」とされているわけですから、おそらく吉村の感性はよっぽど人とズレているんですね。時々、こんな自分自身にある種の「孤独」を感じることがありますが、人と変わっていることが芸術家の証でもあるわけですから、まあこれはこれでいいのです。ちなみに吉村は、好きな作家はたくさんいますが、数年前から東野圭吾にも凝っています。初期の頃の作品はあまり面白くありませんが、近年の作品はすごいです。最新刊の『殺人の門』も一気に読めました。

ローレンシャン地区はなかなか晴れません。すでに4日も雨が降り続いています。こんな時はただひたすら天候の回復を待つのみです。今日はあちこちをロケハンし、時間を潰しました。

1週間ぶりに晴れました。2時間ほど郊外を撮影したのち、モントランブランスキー場のゴンドラに乗ってみることにしました。山頂付近は10センチの積雪です。雪の白と紅葉の原色が混じり合い、それはそれは美しい光景が広がっていました。あまりに神々しくて、神様ありがとうございます……って感じです。帰りは頂上から麓まで徒歩で下りました。たった2時間のハイキングでしたが、とてもいい運動になりました。膝がガクガクになりましたが。

今年も凄まじく紅葉見物で日本人の団体さんが来ています。この時期、1万5千人の日本人が訪れるそうです。ホテルのロビーなどに行くと、そんな団体さんをよく目にしますが、海外では必ず何かのトラブルが発生するらしく、その度に添乗員さんが、現地の日本人や外人スタッフを怒鳴りつけています。その光景は端から見ていて、恥ずかしく、情けない……。おそらく、お客さんたちに「自分は頑張っているんだ」ということを誇張表現によってアピールしたいのですね。吉村はこの15年間でたくさんのグループツアーを見てきましたが、そのツアー自体がよくなるか悪くなるかは、添乗員の力量というか、性格によっても決まると思います。中には「性格ナナメ」の添乗員もたくさんおり、そんなツアーに当たってしまったお客さんたちは本当に気の毒です。グループツアーも、ツアーの内容以上に、添乗員で選べるツアーがあってもいいのにな、という気がします。

カナダはイギリス系のため、安レストランでの外食は、何を食べても不味いです。特にパスタは見事です。注文すると、いつも脳ミソのようなパスタが出てきます。カナダ取材中はそんな不味い物ばかり食べているのですが、ふとあることに気がつきました。たとえばミートソースの場合、ソース自体はまあまあなんです。そう、問題は麺にあるんです。こちらのパスタは、ゆで時間9分でいいところ、なぜか20分以上も茹でています。しっかりとお湯切りをしないので、皿の下にゆで汁が溜まります。つまり、そんな状態の所にソースをドバッとかけるので、何とも奇妙な料理になってしまうのです。でも、パスタをナイフで細かく切って食べる人がほとんどなので、もしかしたらこれはこれでカナダの一つの食文化なのかもしれません。いずれにしても、毎日毎日「日本のホカ弁やラーメンが食べたいなあ〜」と呟きながら取材活動を行っています。

1回のトイレ休憩を入れただけで、一気に700キロ東へ移動、ニューブランズウイック州に入りました。ハイウェイ沿いの定宿で一泊。10年ほど前は1日1000キロ以上のドライブは全然平気でした。でも、吉村もそろそろ中年の一歩手前。最近、無理はしないことにしているのです。

翌日、一気に400キロ東へ移動し、フレデリクトンに入りました。ここでも定宿に一泊。50キロ先にある小さな村ジョージタウンは、僕の好きな村の一つです。高速道路が開通したので、街から村まではわずか15分足らずで行くことができます。夕方と朝方に足を伸ばし、心に響く風景にカメラを向けました。

朝の高速を走り一気に450キロ東へ移動。プリンス・エドワード島に入りました。今回島に来た理由、それは3年に一度の運転免許証の更新のためです。シャーロットタウンに入るとすぐに陸運局に足を伸ばし、更新手続きをしました。カナダでは、証明書に使う顔写真は笑顔が基本です。少し緊張しましたが「はい、撮ります」と言った直後にニコッと満面の笑みを作り、写真を撮ってもらいました。自分で見るのも恥ずかしいほど、免許書の中の写真は、白い歯を見せてさわやかに笑っています。今年は日本の免許書も更新年。ダメもとで笑顔でトライしてみるつもりです。

9月はかなり暖かかったらしく、PE島の秋の訪れは遅れています。よって、紅葉はまだまだ先の話、おそらく20日前後でしょう。島中走り回っても心に響く被写体が見つからないので、海に行ってみました。すると、砂浜にムール貝の殻がたくさん打ち寄せられていたのです。長いこと潮に洗われたため、本来の濃いブルーが透き通るような透明な青さに変色しています。あまりに美しく、思わず拾い集めてしまいました。ついでに綺麗な石も拾いました。35年間生きてきた中で、初めてロマンチックなことしました。

この島でも日本車は大人気ですが、日本で走っている車種がすべて販売されているわけではありません。たとえばトヨタなら、カローラ、プラッツ、カムリ、サーフくらいです。その中でも、小さくて燃費のいいプラッツ(英語名・エコ)が大人気。トヨタの中ではダントツに売れています。今日たまたまトヨタのディーラーの前を通ったら、何とあのヴィッツが展示してありました。ついに北米でも販売を開始したようです。果たして人気車種になるでしょうか。来年が楽しみです。ちなみに、トヨタがレクサスのブランドで出しているソアラやセルシオなどの高級車も、ディーラーに注文を出せば本土から取り寄せてくれます。でも、島で乗っている人は一人いるかいないかです。吉村はすべての日本の自動車会社が好きですが、あえて言うなら、エンジンではホンダ、デザインではマツダが好きです。それにしても、最近のニッサン車って、デザインが素晴らしいですね。10年前はダサダサだったのに、近年の変わり様は凄いです。このカナダの国で、ニッサンの洗練されたデザインの車を目にすると、思わず「オッ、すごい!」と言葉を発してしまいます。

昨年の夏、マウンテンバイクを100ドルで買って日本に持ち帰りましたが、東京にいるときは毎日のように乗っています。江東区はフラットな地形なので、まさに自転車天国です。でもこれっていわゆる輸入車になるので、日本製の空気ポンプやスタンドが使用出来ないのです。ハンズとかに輸入車対応製品が売っていますが、値段は高めです。で、今日はカナディアンタイアに立ち寄り、空気ポンプとスタンドを格安で購入しました。

実は今回も、カナダに来た早々風邪を引いたのです。ローレンシャンで1日寝込み、少しよくなったと思ってハイキングをしたのがいけなかった。次に気管支にきて、凄まじく咳が出るようになってしまいました。2週間経った今でもコンコンと咳いています。夏にも風邪を引きました。何でこんなに体が弱くなってしまったのか、只今原因究明中です。

秋らしくパキーンと晴れました。夕焼け色がとけ込む入江の光景、それはそれは見事な美しさでした。美しい自然を見つめている時って、やっぱり幸せを感じます。

もちろん翌朝も快晴。大気はどこまでも透明で、うっすらと朝靄が漂い、大地に霜がおりています。入江の向こうから眩しい朝日が顔を出す光景はあまりに美しく、思わず写真を撮ることを忘れてしまうほどでした。今までたくさんの美しさを目にしてきました。これからもたくさんの美しさと出会うでしょう。美しさと出会えるのも、積極的に行動しているからなんだと思います。やっぱり、重い腰をあげるって大切なんですね。

PE島を出てニュー・ブランズウィック州に入り、そしてケベック州ガスぺに入りました。何とガスぺにも、世界遺産が一つあるのです。この事実を知った時、吉村は85ヘイでした。世界遺産ミグアシャ公園は、何億年も前の魚とか恐竜とか植物の化石がゴロゴロと出る場所として有名な場所です。残念ながらもう発掘作業は終わっていますが、公園の中には立派な博物館が建っており、数多くの化石が展示されています。ここには昼過ぎに到着、すぐに海岸線の風景と、博物館の中を撮影しました。自分の好きな写真、つまり自分のこだわりのアート写真だけを撮って生活出来れば幸せです。でも、現実は甘くありません。おそらあと20年は無理でしょう。だから、海外取材の時は、観光地や世界遺産など、いわゆる売れ筋の写真も積極的に撮影しているのです。こだわりのアート写真を撮る時との気持ちの切りかえが難しいのですが、吉村は血液型がアレなので、わりかしうまく出来る方です。

その後、ガスぺの山をいっきに越え、セント・ローレンスの畔の街、アルマに入りました。町はずれにある45ドルの安モーテルにチェックイン。今日の走行距離は920キロ。おまけに早朝から撮影していたのでグッタリです。そうそう、途中、車がペシャンコになる大きな交通事故を2件も見ました。ちなみに今は満月です。満月の日って、何故か交通事故が多いのです。

カナダでは1日に一回、車のガソリンを満タンにします。アトランティック・カナダには幾つもの会社のガソリンスタンドがありますが、吉村は好んでアービングに立ち寄ります。なぜならアービングは、30分に一度はトイレ掃除をしています、というのが売りで、そのためトイレはいつも綺麗だからです。吉村は、本当だろうか…といつも疑っており、トイレに入る度に、壁に貼られてあるチェックリストを確認しています。でもきちんと30分置きに掃除をしているようです。掃除が好きな会社は大好きです。ちなみに東京の吉村事務所&自宅は、チリ一つ落ちていません。吉村は掃除大好き人間、少しの暇さえあれば整理したり掃除したりしています。

Jフォンの携帯電話、さすがにガスぺの田舎では繋がりませんでした。モーテルには電話がないので、メールチェックも出来ません。時々、日本からの繋がりが完全にたたれ、孤立してしまうことがあります。カナダ取材中は、テレビは一切観ません。2週間3週間と、外界からの情報を絶ってみると、面白いことに感性がどんどんと研ぎ澄まされていくのです。ひらめきも生まれます。想像力を刺激する。これって、人間生きていく上で、とても大切なことだと思います。東京にいる時は、別に観たくもないのに、ついついテレビをつけてしまいます。向こう側のスピードに流されるし、芸能人の情報ばかりに詳しくなるしで、あまりいいことはありません。いずれにしても、海外に出て、外からの情報がない生活って、たいへん魅力的ですよ。

ケベック・シティ郊外の定宿に滞在中です。このモーテル、トイレからアンモニア臭が漂ってくるし、ベッドカバーや毛布には前の人の髪の毛が絡みついているしで嫌なのですが、1泊35ドルと大都市にしては格安なので、仕方がないことだと割り切っています。2日間はまさに快晴。まるで夏のように気温が上がりました。オルレアン島の紅葉、素晴らしく綺麗です。赤や黄色が、最大限、輝いています。とにかく美しのです。あ〜、それにしてもフィルムがいくらあっても足りません。でも、闇雲に使うとまた大赤字になるので、1本のフィルムを大事に大事に使い、時には撮りたい風景も見逃します。これでも今回10万円分のフィルムを買ってきたのです。それでも足りない。いつの日か、フィルム代を気にせず撮影できる日が来るのでしょうか。

オルレアン島の朝を少しだけ撮影。その後高速に乗り、450キロをノンストップで飛ばし、ローレンシャンのモントランブランへ入りました。紅葉は8割方終わっていましたが、熟れた感じの紅葉も綺麗です。秋の終わりを感じさせる貴重な写真を、2〜3枚撮影することが出来ました。

もう十分な写真を撮ったと判断したので、最終日の午後はオフと決め、モントリオールやローレンシャン在住の日本人6人と、ハイキングなどをして楽しみました。皆さん永住権を取得してこの地で暮らしています。ひょんなことから、今では日本の6割以上の家庭の冷蔵庫にあるカスピ海ヨーグルトの話になりました。驚くことに、今日いた全員が、カナダでもカスピ海ヨーグルトを作っていました。薄い2%牛乳でも、時間さえかければトロトロになるそうです。で、そのカスピ海ヨーグルトですが、前回ホームページに書いたら大きな反響がありました。「吉村さんが作っているとはオドロキです!」と。カスピ海ヨーグルトを手にしてからすでに半年が過ぎようとしていますが、牛乳の種類により、ヨーグルトの出来方が随分と変わってくることを発見しました。スーパーに売っている成分無調整の牛乳6種類すべて試してみました。ビンに入っている値段の高い牛乳や、時々団地にトラックで売りに来る4.4牛乳も使ってみました。で、結論から言うと、やはり白いパッケージでおなじみの、「おいしい牛乳」が一番うまくいくようです。でもこれって、6時頃までにスーパーに行かないと、いつも売り切れになってしまうんですよね。

朝4時に起きモントランブランの定宿をチェックアウト、土砂降りの雨の中、慎重に車を飛ばしてモントリオール空港へ移動。その後レンタカーを返却、6時30分にはノースのカウンターでチェックインすることができました。海外のチェックインカウンターは、Eチケットでの受付が中心となりつつあります。航空券をインターネットで予約し、買うというスタイルは、ますます加速していくことでしょう。荷物にタグをつけてもらった後、モントリオール空港でアメリカの入国審査。アメリカは経由だけなので、入国も税関も何ら問題なく通過できました。デトロイト行きのノースは予定通り出発、約1時間半でデトロイトに到着。3時間後、成田行きの直行便に乗りかえ、約3週間ぶりに日本に帰国しました。

おしまい。