冬の取材報告と、今年一年を振り返って
12月の取材は、ノバ・スコシア州アナポリス・バレー地区一本に絞りました。
雪景色を撮影することが目的でしたが、12月19日に現地入りした時、雪はまったくありませんでした。アメリカ東部から低気圧が流れて来ても、この地は比較的温暖のため、雪が雨になってしまうのです。よって来た当初は雨ばかり。
もしここが日本だったら、こんな状況の時はすぐに東京に舞い戻ることが可能ですが、海外の場合なかなかそういうわけにはいきません。ただひたすら現地で待機するしかないのです。
でも奇跡は起こりました。
今年はグリーンクリスマスかなと諦め掛けていた矢先、なんと大雪が降ったのです。それも12月では珍しい20センチ以上の積雪で、あたり一面真っ白に!
僕は翌日から急に慌ただしくなりました。朝から晩まで、身が凍える寒さと戦いながら(イルミネーションハウスの撮影中、またまた足の指が凍傷になりかけました)、各地を巡りカメラのシャッターを押しました。
25日にも大雪が降ったので、当然ホワイトクリスマスです。よって地元の人も大喜び。
クリスマスが過ぎ去ってからも現地に滞在し、追加撮影を行いました。クリスマス後は誰もが暇です。僕は積極的に知人宅を訪問し、話をしたり、写真を撮ったり……。
ちなみに昨日も30センチの積雪があり、今この地はすっぽりとパウダースノーに埋もれています。
まあ、相変わらずいろいろなハプニングもありますが、12月の取材はまずまず順調です。
さて、春からこのホームページ上で毎日の活動状況を公開するという初の試みをしてきましたが、いかがでしたでしょうか。
随分と慌ただしい生活を送っているんだなあ〜と思われたかもしれませんが、これは今になってはじまったことではなく、サラリーマン生活に終止符を打ち、写真家として独立してから、ずっと繰り返してきたことなのです。
また海外での取材記は、それなりに面白おかしく書いているので、「楽しそうだな」と受け取られたかもしれません。皆さんから頂くメールにも、「羨ましい」という感想がほとんどでした。
でも実際は、海外取材は実にハードなんです。ちなみに今回の冬の取材も結構シンドイ思いをしています。
写真の仕事は、イコール体力勝負ですが、精神面での苦労もあります。
世界に目を向けてみれば、たくさんのテーマが眠っています。でもそれらが、日本人の写真家の手によってなかなか形になっていかないのは、取材が難しいということ以上に、精神力が持続しないことにも原因があると思います。
個人取材というものは、依頼された雑誌の仕事とは違い、何から何まで自分でやらなければいけないので結構大変なんです。
とにかく僕は今年一年間、精力的に活動して拘りの作品を生み出してきました。可能な限り現地に長く滞在し、住む人の視線を持つように心掛けました。その過程で、ある一つの発見がありました。それは、ハードな生活を送った時ほどいい作品が生まれていく、ということです。
キャンプ生活がシンドイな…、ああ取材費が足りないな…、今日は写真を撮りたくないな…、寒さでどうにかなりそうだな…、そんな時に限って、ベストショットが生まれるのです。これって実に不思議です。ある編集者に、「芸術家は常に飢えていないとだめだぞ」と言われたことがありますが、そのことがおぼろげながら理解出来てきました。
もちろんここで言ういい作品とは、観る人に感動を与える作品のことを言います。
たとえば星野道夫氏の作品。数多くいる写真家の中で、どうして星野さんの写真や文章は、あれほど強く人の心を打つのか。
たぶんそれは、星野さんが、体全体でアラスカという地を感じているからですね。雪の原野にテントを張り、一人きりで一ヶ月以上も生活するというスタイルは、やはりすごいと思います。きっとその努力と苦労が、写真に滲み出てくるのでしょう。
それに比べると、僕が海外で行っている撮影スタイルはどうしようもないくらい甘いのですが……。まあ、こればかりは仕方ありません。
いずれにしても、2001年も自分の決めた目標に向け、精一杯写真活動に邁進していくつもりです。
これから先も、このホームページ上で毎日の活動状況をお伝えしていくかはわかりません。でも、個展や出版物の最新情報は、どこよりも早くお知らせしていくつもりです。
(2000年12月29日、ノバ・スコシア州ケントビルにて)